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 放射能が日本各地に降り積もっている
 前作「東京ファミリーストーリー」を出した直後、オレは4〜5年付き合っていた彼女と別れることになった。同棲までして、お互いに結婚をしよう、という雰囲気にまでなった仲だったのに。ところが、未来は読めないもので、彼女は出ていくと言い、オレは泣く泣く実家に引き下がることになった。泣く泣くだったのは彼女も同じだったのだから、男と女というのはつくづく面倒くさいものだと思う。
 大学卒業後フリーターで自活してやってくから、といって親の心配をよそにバンド生活を始めたオレにとって実家に戻るというのは苦渋の選択だったが、オヤジの「戻ってこいよ」の一言に涙を流し、その涙を隠しつつオレは実家に戻った。母は死に、オヤジと姉貴とオレは3人は当然家族であり、しかし今一緒に過ごすことが不思議にも思える、それでいて単調な生活を送った。実家は、オレが想像しているより居心地のいい場所だった。
 オレは新しい仕事につき、日々を送っていたが、毎日毎日は何故か不安や悲しみに襲われることが多かった。それは何か具体的な不安や悲しみではなかったが、何となくトーンはマイナーだった。オレはギターを触って思いのままにコード進行を作り、バンドでやるための曲を夜な夜な研究するのであったが、やはりどの曲もマイナーにでき上がってしまっていた。そうかといってマイナーに劣等感を持つことはほとんどなかった。何故ならオレの人生はマイナーでいいし、暗い悲しみとは異なるマイナーが存在することを確信していたし、何より自分がよく聞く音楽がほとんどマイナーコードに彩られていたからかもしれない。
 前作「東京ファミリーストーリー」から2年半、赤い疑惑はようやく作り溜めた曲を録音することにした。エンジニアーが僕らの曲を聞いて「暗いよねー、僕なんかネ、もう何にも考えてないようなサ、パーっていう音楽しか聞けなくちゃってねー」と冗談混じりに言った。冗談混じりでもオレにはこたえた。そんな正直な感想をぶつけてきたのではっきり言って戸惑ってしまった。そして一瞬自信を失いかけたのだが、媚びちゃいけないゾ、と思い直し、いやいや、暗くたっていいじゃん、オレにはこうすることしかできなかったし、これが最高だろうと思い、そう言い聞かせ、一気呵成にアルバムを完成させたのだった。
 録音が終わり、マスタリングをお願いする前々日、東北地方であの大地震が起きた。勿論メンバーは無事だったし、その後マスタリングも無事に完成したのであったが、あの地震、そして原発事故以降に聞く自分の音源は、震災前と後とでまったく響き方が違ってしまった。これはまさに想定外な出来事だった。変な言い方になるが、天災が、社会が、赤い疑惑の音源に磨きをかけてしまった。そんな気がしてならない。
 震災後動揺する気持ちを抑えながら、オレはアルバムのリリースに向けた活動を仕事の合間に続けていたが、ツイッターから流れる原発関連ニュースの数々があまりにも刺激的すぎて、ほとんど何にも集中できないソワソワした気分だった。それでも仕事とライブなどをこなしながら忙しくしているうち、気付くとオレは反原発・脱原発デモの現場にいたりするのだった。オレは何に導かれ、何のために生き、何のために働くのか、30歳を超えてもまったく分からなかった。
 高円寺の街でも大きなデモがあった。オレは本能的にその渦中に身を投じ、そこに集まった人々の一人一人のエネルギーを感じながら、今までとは別な角度で「日本で生きてる」実感をつかまえた気がした。
 「原発反対」と大きな声をあげるデモ隊の中で一際大立ち回りで団旗を降るかっぷくのいいオトコに見覚えがあった。模索舍で知り合って、一時はよく顔を合わせたK君だった。彼が振る黒い旗は、解放された路上に大きく勇敢に円を描いた。未来はまったく分からなかった。 
                                                                                                〜赤い疑惑 アクセル長尾




〈CD〉オレ達ハ日本デ生キテル/赤い疑惑

[2011年/¥1,575] 発行=赤いプロダクション

〈CD〉東京ファミリーストーリー/赤い疑惑

[2008年10月/全14曲/¥2,300] 《aka-004》 発行=赤いプロダクション

〈CD〉東京フリーターブリーダー/赤い疑惑

[2005年4月/¥1,500] 発=赤いプロダクション

〈CD〉AKAI-GIWACK LIVE 2005.11.05 /赤い疑惑

[2006年5月/¥1,200] (発売元=赤いプロダクション)



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