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ウメウメ書評――泳げるようになってから…



暑いので、ウメます。

…朝鮮では四種類の食糧供給源が並存することとなった。すなわち国家糧政(配給制度)、機関配給(勤めている企業や組織からもらえる分)、ジャンマダン(市場)、個人耕作地…である。ー『リムジンガン2号』p73ー

… つまり朝鮮に対する外国からの支援は、「食料へのアクセス権」の平等化という当面の課題(配給システムの復旧強化がその方策の一つ)と、朝鮮を市場経済体制に誘導して軟着陸させるという戦略的課題(米の市場流通を促す)とが、常に競合してしまうという矛盾にぶつかってしまう。ー『リムジンガン2号』p80ー

…注意が必要な点がある。それは、ここまで見てきたような外貨調達ビジネスの持続が、朝鮮における「資本の初期蓄積過程」だとする見解の危険性だ(韓国の研究者の中に散見される)。この見解は、朝鮮において「資本の蓄積」が改革開放の必要条件だとしながらも、外貨調達ビジネスそのものが、「われわれ式社会主義制度」と先軍政治が存続することを前提としていることを深く考慮していない。そんなやり方で資本が蓄積していくことによって、朝鮮の政治のファッショ化と思想文化の(外部社会との)異質化が、さらに深刻化するという視点が欠如していることである。ー『リムジンガン創刊号』p148ー

…いずれ現在の古い経済制度は全面的に崩壊するだろう。その時が歴史的な新しい秩序創造の大きなチャンスになるはずだ。このチャンスを、人民が豊かに暮らすことに貢献する正常な国家建設のために正しく利用するのか、それとも不正腐敗と権力ばかりが幅を利かせる世の中のために利用することに終わるのか、いまはその岐路にある。ー『リムジンガン3号』p112ー

『リムジンガン』に寄稿するどの識者も「市場経済」への流れは押しとどめようがない、ということで意見は一致しているようです。

 市場経済移行への予期は、市場という「ゲーム」における有利なプレーヤーになるべく、軍官僚/政府官僚を、不正蓄財へと、外貨調達へと駆り立てる。そしてそのためには現状のジャンマダン(市場)」/配給混合経済を維持しなければならない。不正蓄財は横流しする「闇市場」の存在がなくてはならないからだ。これはソ連/東欧の崩壊でもみられた現象で、市場経済では張り金は多ければ多い程いいし、勝ち組になれるだけの財とコネクションを形成しておくに越したことはない。のび太くんのように「泳げるようになってからプールに行く」つもりなのだ。

 のび太くんがプールに行かなくても困らないが、食糧が分配されないのは大問題だ。飢え死にしないためには“「食料へのアクセス権」の平等化"がなされなければならないが、同時に”市場経済への軟着陸”のため、各プレヤーヤーが「平等に」市場ゲームに参入するための財の適切な配分をも同時に達成しなければならない。

 そのためのにはさまざまな「矛盾」につきあたる。市場ゲームの適切な「初期配置」のためには国家権力を強化しなければならず、国家権力を強化は先述のように不正蓄財をもたらす。仮に綱紀が粛正され平等な分配が行われるとしよう。その場合、もはや市場は必要ではなくなる。プレイヤーの持ち物がほとんど同じだから。欲しいものがあるとすればそれは「舶来品」で、買うためには外貨が必要となる。そして国際競争力ある商品がなければ、外貨獲得の手段はこれまた不正蓄財、ということになってしまう。

 誰だって損はしたくない。市場による売買は双方の得になっているハズで、おのおのの効用を増大させている、だから社会全体の効用も増大するハズだ…。市場は財の適正な配分をもたらす、かのようにみえる。が、誰がどれだけ所有すべきか、については何も語らない。「だれもがケーキをより多く望むとすれば、どのようなケーキの配分もパレート最適である」。市場ゲームの初期配置を決定するのは無意識的な「原蓄過程」であるほかなく、意識的な市場開放はゲームの開始をいたずらに遅延させ、遅延は、混乱を生み、生活そのものを破壊していく。

のび太くんとはちがい、泳ぎ出すのは監視員も救助係もいるプールではなく、「新自由主義経済」という荒海なのだ。ーいったい誰が、責任を取れるのか?いな、無責任であるからこそ、「市場」なのだ。

 「北朝鮮」の抱えている難題は、市場経済が抱える難題でもある、のではないでしょう?。

(ややピント外れな「市場経済」問題についてばかり書きましたが、『リムジンガン』は後継車問題、核問題、脱北車問題、さまざまな市民の声…etcさまざまな問題をとりあげております)。

129770.jpg◆季刊 リムジンガン 日本語版 第3号[2009年春号]

[2009年2月/A5/220頁/¥2,838+142] 責任編集=石丸次郎 発行=アジアプレス・インターナショナル出版部




















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◆季刊 リムジンガン 日本語版 第2号[2008年夏号]
[2008年8月/A5/200頁/¥2,838+142] 特集=北朝鮮不動産取引の怪 ほか 編集・監訳=石丸次郎 発行=アジアプレス・インターナショナル出版部
















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◆季刊 リムジンガン 日本語版 創刊号[2008年春号]
[2008年4月/A5/247頁/¥2,838+142] 特集=ミサイルと核騒動 北の民衆はどう見たか ほか 編集・監訳=石丸次郎 発行=アジアプレス・インターナショナル出版部

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