模索舎WEB月報
TOPへ

ROCKET to LOCKET




あれはヒマラヤ山脈の東端に足を踏み入れて1週間が経とうとする日のことだった。
チベット世界最古の仏教寺院のひとつ、ジャンパ・ラカン。民族衣装をまとった老婆たちの背中を追って、マニ車を回しながら時計回りに参拝する。堂内に進むと、僧侶たちが楽器を演奏しつつお経を唱えていた。一心不乱に口を動かし続けるその姿は、まるでハイな状態へとトリップしているかのようだ。向かいには未来仏を意味する弥勒菩薩像。参拝客の重みの蓄積によって凹んだ石段に足をかけると、ぼくの意識も1400年間の時空へとトリップした。
気分がハイになったぼくは、せっかくの記念に何かしらのモノがほしくなった。着いたときには気にも止まらなかった土産売りが、今となっては宝石商にさえ見えてくる。腰を下ろして吟味すること10分間。立ち上がったときには、チベット仏教のマントラが刻まれたペンダントを首もとにぶら下げていた。
次に訪れたのはクジェ・ラカン。王室も帰依しているお寺の背後では、国樹イトスギが仁王立ちしている。何か閃いたそぶりのガイドが屋根のそばへと駆け上がり、落ちていた種子と葉っぱを拾った。そしてぼくを手招きすると、首もとのターコイズを引き裂いた。ペンダントはロケットだったのだ。ガイドは種子と葉っぱを詰めこむと、得意気に白い歯をのぞかせた。
ロケット――英語にすると「LOCKET」。ぼくはこの6文字を獲得するためにこの地まで導かれたのかもしれない。外国人の個人旅行が禁止され、1日当たり240米ドル以上の公定料金が課される、「幸福の国」ことブータンへ。

23歳を迎えた3月に旅雑誌『LOCKET』を創刊した。ここには便利で最新な情報がなければ、ストックフォトからかき集めたような絶景写真もない。目には見えない記憶がロケットに閉じこめられているように、姿なき価値観や思想、物語を紙に綴じこめた。
創刊号の特集は「しあわせのありか」。旅に答えがないように、しあわせに正解なんてないかもしれない。でも、旅先に示唆があるのなら、しあわせにもヒントがあるはずだ。国民の97%が幸福に暮らすといわれるブータン、幸福度ランキング1位を走るデンマーク、海によって開かれた小値賀島。2つの幸福大国から、日本の離島まで、しあわせのありかを探す旅に出た。
インタビューも多数収録。山伏兼イラストレーターの坂本大三郎氏、体育教師としてブータンで3年間を過ごした関健作氏、雑誌や広告などで活躍する写真家の角田明子氏、『せとうち暮らし』編集長の小西智都子氏。そして、巻末には角幡唯介氏のロングインタビューを掲載。角幡氏は『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』や『雪男は向こうからやってきた』、『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』などで数々のノンフィクション賞を受賞した探検家・作家だ。春からの1年間に渡る極地探検計画、旅の本質、言葉を生み出すことなどについて耳を傾けた。
次号は2016年春に刊行予定。この創刊号にプレミアがつく日まで、ぼくと『LOCKET』の旅ははじまったばかりだ。
 


LOCKET編集発行人 内田洋介



LOCKET 01

目次:
〈SPECIAL〉しあわせのありか
〈TRAVEL〉ブータン、デンマーク、小値賀島
〈INTERVIEW〉坂本大三郎、角田明子、小西智都子、関健作
〈NATURAL BORN STRANGER〉角幡唯介

[2015年3月/B5変形/88頁/¥900+72] 特集=しあわせのありか 
発行=PAPERIOT

<   2015年5月   >
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
フリーペーパー版模索舎月報
  • 2011:10:10:20:20:21 フリーペーパー版模索舎月報11年10月号配布中!! (10/10)

リンク
★☆模索舎ブログ☆★


特集〜インタビュー・活動紹介など