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北京の書店から見る日本



年々肌の衰えを感じる一方、新年を迎えて心機一転の盛りだくさんスケジュールを組むもすぐ力尽きるパターンは相変わらずの吉井忍です。何者かと思う方がほとんどでしょう。北京に住み、主に中国のメディア向けに文章を書いて暮らしている日本人フリーランスライターです。よろしくお願いします。

皆さん、中国の作家と言えば誰を思い浮かべますか。ノーベル文学賞を受賞した莫言、『阿Q正伝』の魯迅、『活きる』の余華などなど。

では、今の中国で売れている日本人作家の作品にはどんなものがあるでしょうか。百聞は一見に如かず、まずは北京の本屋さんを覗いてみましょう。書店と言えば新華書店という時代もありましたが、今は民営店も頑張っています。海外カルチャー系、社会派系、文学重視、女性向けなど特色を出しており、本屋ごとに売れ筋は違います。
 

xinhua book store.jpg 近所の新華書店。品揃えはイマイチかな……

きょうは著名な民営書店『単向空間』という書店に参りました。雑誌の編集、ライター、または作家などの13人が一人あたり5万元(約日本円95万円)を出して作った書店で、現在は北京に3店舗あります。文学、社会、アート方面の書籍・雑誌がほどよく取り揃えられており、カフェを併設し、作者を招いたイベントを行うなど、書店を兼ねた社交の場を目指しているようです。

book store 1.jpg『単向空間』の入り口

 

book store 2.jpg 単向空間』の店内。一番手前の黒い棚が日本文学用。

 店内には「欧米文学」と並んで「日本文学」の専用本棚があります。店員さんにお話を伺いました。一番の人気はやはり村上春樹。その次に『失楽園』の渡辺淳一。彼が亡くなった時は中国でもかなり報道がありました。『窓際のトットちゃん』(黒柳徹子著)は翻訳本が出て10年以上経ちますが、未だに総合ランキング上位10位に入る人気を誇ります。日本と違って児童書に区分けされており、教育部が小学1〜2年生の課外読書向け推薦図書のひとつとして取り上げています。

murakami.jpg村上春樹シリーズ

また、数年前から中国では若者を中心に推理小説がブームで、特に東野圭吾は「2カ月に1冊のペースで翻訳版が出ている」ほどの人気。その一方で川端康成、三島由紀夫などの純文学も安定した売れ筋とのこと。

higashino.jpg東野圭吾シリーズ
 

ライフスタイル系も根強い人気。「Café&Meal MUJI」のレシピ本ほか、『断捨離』(やましたひでこ著)、茶道エッセイ『日日是好日』(森下典子著)などなど。アート系では『東京日記』(荒木経惟著)や『犬の時間』(森山大道著)の翻訳本が置かれていました。

 

lifestyle.jpgライフスタイル系は平積みが多い

 日本に関しては軽めの内容が売れ筋のようです。余談ですが、あからさまに嫌日を謳う本は見当たりません。コーヒーの香り漂う店内に血気盛んな本は似合わないのかもしれません。

私がきょう買ったのは、香港城市大学・郭位学長の『核電とスモッグと君』(北京大学出版社、2014年9月、36元)。中国では沿海部に200の原子力発電所建設が進められていると聞きますが、新聞などにはあまり関連する情報がなく、珍しいと思って手に取りました。副題に「福島の放射能事故からエネルギー、環境保全および工業の安全性を考える」とあります。ざっと読んだ限りでは、信頼度を高めた原子力発電を推進する文脈のようです。

ちなみに、コーヒーっていくらすると思われますか。スタバで30元前後(約560日本円)、おしゃれカフェでは10元ほと高くなります。単行本が約40元、雑誌が25元前後、タブロイド版の地元紙が1元であることを考えると、コーヒーは割高ですね。

この時期、中国に住んでよかったと思うことは、旧正月があることです。元日に立てた目標が脆く崩れ去ったとしても、中国ではまだ「旧年中」。その後に迎える旧暦の正月(今年は2月19日)で、爆竹の音と共にうやむやに……ではなく、「リセット」すればよいのです。新たにすばらしい目標を打ち立てて頑張りたいと思います。

 

執筆者の中国語エッセイ集『四季便当』http://t.cn/RZpmuvh
執筆者の微博(中国版ツイッター)http://weibo.com/u/1927463421



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