模索舎WEB月報
TOPへ

アナーキスト市長誕生



もう二度と政党には投票しないで下さい。
なぜなら、政党は経済的強者の味方であり、大衆の生産力を収奪する者の味方だからです。
皆が、だれもが、芸術を、つまりあなたたち自身を選ぶのです。
あなたたち自身が国家なのです。
あなたたちの所有している権力を自己決定する権利に基づいて行使しなさい。
あなたたち自身を統治しなさい。

ーヨーゼフ・ボイスー

これは70年のノルトライン=ヴェストファーレン州議会選挙でのヨーゼフ・ボイスたちの呼びかけです。ボイスは個人を自由と成熟に導く為に〈こうすれば政党支配は克服できる〉というタイトルのビニール袋をストリートアクションとして街にばら撒いた。街の人たちの関心を掻き立て大いに議論した。ボイスは自らの行動を〈社会彫刻〉と概念化して芸術と社会活動の壁を取り払った。


2014年12月14日に第47回衆議院総選挙が行われた。自民党圧勝を望まない人達にとっては震災以降の不穏な動きを止める最後かもしれない好機。の筈だが私の気持ちは冷めていた。誰もが結果は何となく分かっていた。震災以降の選挙はいつも何かが大きく変わりそうな期待はあったけどいつも肩すかしを喰らうような結果だった。それでも今回の選挙もそれぞれが一抹の希望を心の奥底には抱いていたと思う。そんな気持ちで懸命にさまざまな選挙運動をする人、もう選挙では何も変わらないと新たな活動に力を入れる人、考えた末に一票を投じる人、さまざまな想いで選挙期間を過ごしたと思う。でも個人的には震災後一番面白くない選挙だった。そんな想いの中で因島に住む私は期日前投票を済ませた。

選挙当日は東京の「路地と人」で何故か2日間で20時間ライブペイントを生演奏と同時進行でするというバカなことをしていた。黙々と祈るような気持ちで部屋の壁、床、天井に描いた巨大なひとりの人間「原子の巨人」を描ききった。その巨人の身体の中には自然と社会のあらゆる現象が混然一体となって存在していた。ひとりの人間の中には世界の全てがある。それならば個人が変化すれば社会も変えることが出来るのではと描きあげた時に思った。この催しは「アナーキストの楽しい社会研究」の出版記念イベントとして行われた。この本は東京から因島に移住して色々な事を調べたり体験したりする事で村上大樹という個人が変化していく過程を書いた本です。でも個人が変化しただけでは社会は何も変わりません。しかし大きく変えることは出来なくても小さく少しずつなら私にも社会に対して出来ることがあるのではないかと「原子の巨人」を描きながら考えていた。そんな中、選挙の結果は予想どおり自民党圧勝というつまらないものだった。

最近は本当に選挙に興味がなくなっている。私は単純な人間なので選挙に友達が出ないのが一番乗り気になれない原因だと思う。やはり言葉を交わしたり身体を触れたりした事がない人に投票したって面白くない。今年の4月に尾道市の市長選挙がある。そうだ、どうせ友達は誰も出ないからこの選挙に私、村上大樹が立候補するという暴挙を思いついた。よし「アナーキスト市長」になってやろう。あ、そうだ、しまった、今年は4月〜5月にイギリスで展覧会が決まっていて立候補は難しい。しかし欲張りな私は両方を実行できるアイデアを思いついた。

アーキグラムという1961〜70年代初頭にかけ活躍したイギリスの前衛建築家集団がいる。彼らは経済を回していく為に建て続けられる建築産業に疑問を感じ、大好きな建築物を実際に建てるのではなく紙の上にドローイングした絵を「建築作品」として次々に発表した。足のついた巨大な移動都市「ウォーキング・シティ」など紙の上でなければ実現できないような奇抜でユーモアのある「建築作品」は本当に素晴らしい。そこで私もアーキグラムに見習って紙の上で立候補することにした。「村上大樹・尾道市長選挙立候補・当選・その後の街づくり」という作品をアーキグラムを産んだ本国イギリスで発表する事にします。美しい一編の詩のようなマニュフェスト、現実可能な街づくりの構想を絵に落とし込む。作品の中で思考の中で精神的アナーキスト市長が誕生するのです。私はチイサイカイシャ基地というフリースペースを因島で運営しています。そこに最近、商工会議所から何か街づくりの知恵を貸して欲しいとの要請がありました。新聞社の方にも現尾道市長がチイサイカイシャ基地の存在を知って何か支援したいと言っていたと聞きました。作品の中でアナーキスト市長になった私と現実の市長が対面する日も近い。今年はこの街づくりの構想を色んな場所で発表したい。現実の市長にも目一杯この構想をプレゼンしよう。大きな社会は完全に腐っていて変える事は難しい。しかし全国各地で小さいけれど新しい動きが始まっている。ここ尾道もそんな新しく変化して面白いコミニュティを形成している街です。その変化の波を瀬戸の島々とともに更に深いものにしたい。私が2年後に本当に立候補したら、尾道市民の皆さん清き一票を村上大樹にお願いします。

そんな私の書いた本『アナーキストの楽しい社会研究』の中で、10章に渡って様々なフィールドワークを記しました。某ウェブマガジンで連載中止となった問題作の書籍化。ウンコから考える生命論、なんちゃって自給自足、野犬の群れの小さな社会、家賃0円を改装費も0円で作る実験、福島の内側と外側など、村上大樹が震災後の社会や場所と生き方について楽しく真面目に考えた究極のデタラメ研究書です。どうぞよろしくお願いします。

村上大樹 



アナーキストの楽しい社会研究

目次:1 野犬の群れの小さな社会/2 震災直後の東京で/3 福島の内側と外側/4 ウンコから考える生命論/5 なんちゃって自給自足/6 ゴミから法律の外側へ/7 ゾンビ生物学/8 ドラえもんの空き地にある空洞/9 家賃0円、改装費も0円の実験/10 「アーユーウィズミーグリーン」/
[2014年12月/四六判/118頁/¥1,500+120] 著=村上 大樹 発行=チイサイカイシャ

<   2015年1月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
フリーペーパー版模索舎月報
  • 2011:10:10:20:20:21 フリーペーパー版模索舎月報11年10月号配布中!! (10/10)

リンク
★☆模索舎ブログ☆★


特集〜インタビュー・活動紹介など