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たしかな航跡



思想の海に、反権力・反資本主義の航跡を描く-
このような帆を掲げて2011年7月、航思社は出航した。
 

その前年の末、前職の、人権擁護・反差別をうたう人文社会科学系の出版社での2年半におよぶ労働争議で勝利をおさめたが、その矢先に、東日本大震災・福島原発事故が起きた。これまでの日常がいとも簡単に崩れるのを前にして、どうせならやりたいことを、好きなだけ思い切りやろうと決意して、4ヶ月後に創業にこぎつけたのだった。

 左翼出版の一翼を担うべく「反権力・反資本主義」と威勢のいい見得を切ったが、より実直なことをいえば、信念と責任をもって出版し、自らの出版物に決して背かないこと。言説を生み出すことに伴う、これらを含めた一切の責務を全うすること。これを小社の最低限のルールとしている。そして、これが決して上辺の言葉だけに留まることがないことをここで誓いたい。
 

出版においてこうしたことは、ルールとか誓うとかそんな大仰ではなく、あまりに当たり前すぎることではあるが、これが先の争議の教訓でもあり、また大震災・原発事故に接しての思いだった。

 さて、かつては社会的なレベルでの脱政治化や政治的なものの忌避(今になって思うのはこれ自体が右傾化の前兆だったのではないか)が指摘されて久しかった。
 

しかし東日本大震災・福島原発事故をきっかけに、1万5000人が集結した4.10高円寺デモをはじめ、何がしかの「革命」を起こせるのではないかとすら思える状況が現出、今も首相官邸前ではデモ行動が続いているが、一方で、その反動でもあるかのように、安倍政権下でタガが外れて右傾化・排外主義が激しさを増してきてもいる。
(模索舎などを例外として、書店が、売れ行きがいいからと居直って、人目のひくところに嫌中憎韓の「ヘイト本」を所狭しと並べて右傾化に加担、さらに拍車をかけていることについては、これ以上言及しないでおく)

 たんに右傾化にすぎないものに対し、「ヤンキー化(文化)」などのレッテルを貼ることが横行しているが、それが孕んでいる政治性を見えなくさせる悪しき風習の二の舞でしかない。この行為は、政治的なものの忌避であるにもかかわらず、行為それ自体が政治的であり、この場合、分かりやすいものに変えて社会全般に流通させるという一見「良心的」で「ジャーナリスティック」な振る舞いが、結果として右傾化に加担している点で、犯罪的ですらあると思う。

 しかし、脱原発/反原発といい、反ヘイトスピーチといい、シングルイシューのもとで左右の政治性を問わない運動に対しては、どうしても違和感を覚えざるをえない。在特会系のデモに対する「社会的正義」、原発に対する「社会的正義」に政治的なスタンスは関わらないのだろうか? カウンター行動に実行力をもたせるためには、そして首相官邸前行動の規模を大きくし、また維持継続させるためには、政治性を不問にしてよいのだろうか。
 

 在日韓国・朝鮮人の問題には天皇/天皇制が深く関わっており、それ抜きには考えることができないのは事実である。また、先の東京都知事選の細川護煕・小泉純一郎陣営に対して諸手を挙げて支援・支持した左派もいたが、これこそ成果主義にとらわれた「俗情との結託」以外の何ものでもない。小泉の脱原発方針は、首相当時の労働者・貧困層弾圧政策と同じく、電力自由化というネオリベ的発想に根ざしている。
こうした本来根源的・決定的なものとしてあるはずの政治的差異を無視した運動は、超短期的な効果は得られたとしても、所期の目的を果たすことができるとは思えない。「大同団結」の名において抑圧されたものがいずれ、運動にとって致命的なレベルで回帰するだろう。

左翼の運動や言説は、いま一度、原理原則に立ち返るべきではないか。これまで多岐にわたって展開され、蓄積されて肥沃なものとして存在しており、今こそ読まれ、読み直されなければならない。そう思い、「革命のアルケオロジー」というシリーズを考えたのだった。
 

 戦後から80年代までに発表された、あるいはその時期を対象とした、マルクス主義、共産主義、民主主義、大衆反乱、蜂起、革命に関する文献。その第1弾がジャック・ランシエール『アルチュセールの教え』であり、ついで松田政男『風景の死滅 増補新版』である。続刊には、クリスティン・ロス『68年5月とその後』、津村喬『横議横行論』、RAF『ドイツ赤軍(I)1970-1972』などを予定している。

また、現在進行形の言説として小社最新刊の絓秀実『天皇制の隠語』は、「反資本主義」「共産主義の理念」を語るべく、封建制=天皇制を焦点とした日本資本主義論争から、ネグリ&ハートなどの人的資本論までを論じている。

同書をぜひ書店でお手に取っていただければと思う。
そして、小社の出版活動に今後もご注目いただければと願う。

航思社・大村智

 天 皇制の隠語出版記念イベント

日本資本主義論争と文学

 

航思社の刊行物

天皇制の隠語

[2014年4月/四六H/474頁/¥3,500+280] 著=すが秀実 発行=航思社

 

存在論的政治 反乱・主体化・階級闘争

[2014年2月/四六H/572頁/¥4,200+336] 著=市田良彦 発行=航思社

 

風景の死滅 増補新版

[2013年11月/四六H/344頁/¥3,200+256] 《 革命のアルケオロジー2》 著=松田 政男 解説=平沢 剛 発行=航思社

 

アルチュセールの教え

[2013年6月/四六判/324頁/¥2,800+224] 著=ジャック・ランシエール 訳=市田良彦・伊吹浩一・箱田徹・松本潤一郎・山家歩 発行=航思社

 

2011 危うく夢みた一年

[2013年5月/四六判/276頁/¥2,200+176] 著=スラヴォイ・ジジェク 訳=長原豊 発行=航思社

 

共通番号制(マイナンバー)なんていらない 監視社会への対抗と個人情報保護のために

[2012年4月/四六判/176頁/¥1,400+112] 著=小笠原みどり/白石孝 編/著=日本弁護士連合会 発行=航思社

 

デジタル社会のプライバシー 共通番号制・ライフログ・電子マネー

[2012年1月/A5/476頁/¥3,400+272] 編/著=日本弁護士連合会 発行=航思社 (発売元=大学図書)

 



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