1971年創刊の『薔薇族』は日本初の同性愛マガジンとして隆盛を誇りましたが、インターネットの台頭には勝てず2004年に休刊となりました。版元を他に移して翌年復刊されたものの8号で再休刊となり、その後IT系企業の出資で再復刊されるも今度はわずか1号出したところでスポンサーが経営破綻して夜逃げ……。常人ならこの時点で匙を投げるでしょうが、稀代の怪人として知られる編集長の伊藤文学はメゲませんでした。瀟洒な邸宅を借金のカタに取られながらも「まだ自分の使命は終わっていない」と逆に闘志を燃やしたのです。
私は初代『薔薇族』休刊時には単なる一読者でしたが、HPに発表したコラムをきっかけに伊藤氏と懇意になり、復刊版のスーパーバイザーとして編集に関わるようになりました。その縁で「ポケットマネーでもう一度『薔薇族』を出したい」という氏を手伝うこととなり、副編集長として4度目の『薔薇族』を8冊作ったのです。しかし7冊目を出した辺りで、体力の限界を感じた伊藤氏から「9冊目が丁度400号でキリがいいので、そこで終わりたい」との申し入れがあり、私も合意しました。
ところが09年の頭に399号を出したところで発行はパタリと止んでしまったのです。その原因は伊藤氏の未練でした。終わらせると決めたものの『薔薇族』への愛着はやはり断ちがたく、「そろそろいかがでしょうか?」と打診しても「う〜ん、まだいいンじゃないかなァ」と渋り続け、空白期はあっという間に2年を超してしまいました。
そんな『薔薇族』の発行が2011年・夏に再開! 最終号の予定だった400号は一転、再出発号となり、更に編集長も伊藤氏から私へと交代したのです。その背景には、いっこうに減る気配のない「同性愛者の抱える苦悩」がありました。『薔薇族』の誕生から今日に至るまでに、同性愛者の世界では確かに様々な変革がなされました。しかし皮肉にもその変革から新たに生み出された悩みや問題などもあるのです。「まだまだ『薔薇族』を失くすわけにはいけない」と痛感した私は「どうか『薔薇族』を継がせてください」と伊藤氏に懇願し、それは幸いにも快諾されました。そして『薔薇族』の創刊記念日である7月21日に再出発号が発売されたのです。
私の決意に天もご祝儀を下さったようで、400号の発行直後にイラストレーター兼デザイナーの猪口コルネ氏と運命的に出逢い、彼の働きによって401号はヴィジュアル面の大幅向上が果たせました。大量に刷れないマイナー誌なので「インクジェットプリンターで印刷して手作業で製本する」という、まるで家族経営の手焼き煎餅屋のような作業を毎回繰り返すことになりますが、彼と2人、アセらずクサらずボチボチやっていくつもりです。
現代は紙モノが不利と苦戦を強いられる時代ですが、紙にはツールとしての優位性があると私は思います。どんな相手に対しても「これを読んでください」と気軽に手渡せるのは紙ならではの強みであり、電子書籍ではこうはいきませんから。ちなみに400号からは「視力の衰えた人でも読みやすいように」と、本文級数を雑誌としては最大レヴェルにまで上げているのですが、それは「常に弱者の側に立って動く」という伊藤文学イズムの継承の産物です。
竜超版『薔薇族』のコンセプトは《自分でかんがえ、うごき、こしらえる 新・同性愛者の生活誌》ですが、その内容は同性愛者にしか役立たないものではありません。児童ポルノ規制に老後不安、そして原発などの時事問題等々、誰にとっても他人事では済まされない事柄について毎号取り上げていきます。これはゲイマガジンとしてはかなり異色な方向性です。同性愛雑誌というのは一般側から異端な媒体と思われがちですが、その中でも更に異端の存在なのが竜超版『薔薇族』なのです。異端者側からも異端視される雑誌が果たしてどのような代物なのか、機会があれば是非一度ご覧ください。
『薔薇族』編集長/「野ばら浪漫舎」主宰 竜 超(りゅう・すすむ)
野ばら浪漫舎HP http://nobara.oops.jp/
| 薔薇族 401号 [2011年11月/B5/48頁/¥700+35] 編/発=竜 超 |
| 薔薇族 400号 [2011年7月/B5/28頁/¥500+25] 編/発=竜 超 |
『薔薇族』関連書籍
| 消える「新宿二丁目」 異端文化の花園の命脈を絶つのは誰だ? [2009年3月/四六判/276頁/¥2,500+125] 著=竜超(りゅうすすむ) カバー装画=山川純一 本文イラスト=ソルボンヌK子 ポートレート撮影=櫻田宗久 発行=彩流社
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| 虹色の貧困 L・G・B・Tサバイバル!レインボーカラーでは塗りつぶせない「飢え」と「渇き」 [2010年7月/四六判/197頁/¥2,000+100] 著=竜超 発行=彩流社
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| やらないか! 『薔薇族』編集長による極私的ゲイ文化史論 [2010年11月/四六判/254頁/¥1,800+90] 著=伊藤文学 発行=彩流社
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![]() | 裸の女房 60年代を疾風のごとく駆け抜けた前衛舞踊家・伊藤ミカ [2009年6月/四六判/263頁/¥2,000+100] 著=伊藤文学 発行=彩流社
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