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忌野清志郎はやっぱり予言者だった




私はここ数年知り合った幾人かの人から、「話し方や雰囲気が忌野清志郎に似ている。」と言われたことがある。これまで忌野清志郎の楽曲はほとんど聞いたことがなかったし、彼についてもほとんど知らなかったが、そんな言葉を人から投げかけられるたびに、少しずつ彼への興味や関心が湧き始めて、最近ようやくイマーノ(忌野清志郎の自称)の音楽や著書を貪るように聞いたり読んだりするようになった。

そうして解かったことがいくつかあった。彼が孤独な大バカ者であり、必死に自分自身と戦い続けた人であり、自分自身を嫌悪し続けた人であり、人びとに認めて欲しくて、言葉に耳を傾けて欲しくて寂しがり屋だったということ。天災(天才)は忘れた頃に…とは言わないが、まさに私の中ではそういった感覚で、こんなにもすごい人がこの世に、しかもつい最近まで存在して高々と声を上げて歌っていたのか、なんでそんなことにも気付かなかったのだろう、とそう悔やまれるばかりである。人間という生き物は、何て愚かなのだろう。何度も同じ過ちを繰り返し、そして忘れていく。忘れていくのも人間の本質の一つであり、そのおかげで人生の中にどれだけ悲しいことや辛いことが待ち受けていたとしても生きていくことができるということも確かなのではあるが…。死んでから、失ってから、その人やモノが一体どれだけ自分にとって貴重で大事なものだったのか気がついても手遅れである。本当に大切なものの価値に気付けるだけできっと人生の見え方は大いに変わってくるのだろうと思う今日この頃である。

苦労なんか知らない 恐いものもない
あんまり大事なものもない そんなぼくなのさ

世間知らずと笑われ 君は若いよとあしらわれ
だけど今も夢を見てる そんなぼくなのさ

部屋の中で 今はもう慣れた
一人きりで ボンヤリ外をながめてるだけ

世間知らずと笑われ 礼儀知らずとつまはじき
今さら外には出たくない 誰かがむかえに来ても

部屋の中で 今はもう慣れた
一人きりで ボンヤリ外をながめてるだけ

苦労なんか知らない 恐いものもない
世間知らず 何も知らず
夢をまだ見てる
そんなぼくなのさ
そんなぼくなのさ
(「世間知らず」作詞・作曲 忌野清志郎)

しかし、だが。あのイベントは若手の出演者が多かった。そこに盲点があったのだ。楽屋はまるでにぎやかな部屋のように若手でムンムンし、キッカワやBOφWYやサンプラザになつかれちゃってまいったぜ。ヤツらはどーもオレのことをロック界の長老のように扱うから困る。どーしていいのか、ついついオレもニコニコしていたのがイケナかったよーだ。ヤツらはオレのことを「キヨシローさん」て呼ぶんだぜ。うー、もっと聞くからにロックっぺー呼び方をしてもらいたいもんだぜ(ちなみにオレの側近は「ボスッ!」と呼ぶんだ。どーだ。なかなかロックっぽいでしょ)。「4日連続してキヨシローさんの夢を見ました」とか言っていたBOφWYのホテイは、オレより背が2mも高いくせに、オレばかりたてやがって。キッカワだってそーだ。オレよりも肩幅が5mくらい広いくせに、やたら持ち上げる。俺はカスミ食って歌ってる、殿堂入りしたロックの仙人じゃないんだからさ。ライバルなんだぜ、オレたちは。(『忌野旅日記』、忌野清志郎著、音楽之友社、1987年、p.74より引用)

暑い夏がそこまで来てる
みんなが海へくり出していく
人気のない所で泳いだら
原子力発電所が立っていた
さっぱりわかんねえ 何のため?
狭い日本のサマータイム・ブルース

熱い炎が先っちょまで出てる
東海地震もそこまで来てる
だけどもまだまだ増えていく
原子力発電所が建っていく
さっぱりわかんねえ 誰のため?
狭い日本のサマータイム・ブルース

寒い冬がそこまで来てる
あんたもこのごろ抜け毛が多い
それでもTVは言っている
「日本の原発は安全です」
さっぱりわかんねえ 根拠がねえ
これが最後のサマータイム・ブルース

あくせく稼いで税金とられ
たまのバカンス田舎へ行けば
37個も建っている
原子力発電所がまだ増える
知らねえうちに 漏れていた
あきれたもんだなサマータイム・ブルース
(「サマータイム・ブルース」歌詞より引用)

この歌の歌詞なんて、非常に痛快だ。もし今、忌野清志郎が生きていて、日本の現状を目にしたら、彼は一体何を思い、何をしただろうか?何を歌っただのだろうか?そんなif節を考えたところですべては無駄な話である。ちなみに今現在日本には55基の原子力発電所があり、2013・14年には福島原発の7号機・8号機の稼動開始が予定されていた。そして、まさに7号機・8号機の建設が開始される矢先に今回の東北大震災が起きた。これは単なる偶然か、それとも必然だったのか?

忌野清志郎はやっぱり予言者だった。

(文責:音楽雑誌Oar編集長 野上郁哉)



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