模索舎WEB月報
TOPへ

Rock 'n' Roll is still “Alive”



2010年は皆さんにとって、どんな年だっただろうか?
作家、中島敦の小説「山月記」の中にはこんな言葉がある。
「人生は何事をもなさぬにはあまりに長いが、何事かをなすにはあまりに短い」
私にとってこの一年は本当にこの言葉を痛感させられる一年だった。また人の縁にも恵まれた。「人」との出会いというのはそれだけでも十分人生の宝といえるものだと私は考えている。

・・・

さて、せっかくなので2010年の音楽について私が感じたこと・思ったとりとめもないことを徒然に書きなぐってみようかなと思う。
まずこんなことは私が言うまでもなく皆さんもお気づきかと思うが、それでも敢えて言うならば、音楽業界全体に対して感じるのは、音楽の完全なる資本主義化とコマーシャリズムである。つまり、「良いもの」が売れるのではなく、売れるものが「良い(あるいは正しい)」という価値観である。こういうとき、私たちは一度立ち止まって考え直さなければいけない。「果たして、あれは本当に「良い」ものであるのか?」と。人々はますます「審美眼」を失い、「本当に良いもの」が一体何なのか見分けることが出来ないほど鈍感で不感症になってしまっている。

「何ごとにつけ、成長の速いものは滅びるのも速く、ゆるやかに成長するものはより永続する。」(『鳩の頸飾り〈イスラーム古典叢書〉』イブン・ハズム著、黒田壽郎訳、岩波書店、1978年)p.45より引用。

売れるからには確かに何か人を惹きつける魅力があるには違いないが、数年後、中古CDショップの棚にガラクタ同然に積み上げられている光景を私たちは容易に想像することが出来る。音楽も即時的な享楽のための単なる消費物に堕してしまっていることの何よりの証拠である。これは非常に憂うべき状況である。いや、もうそもそもそんなことに一々杞憂せずにそれはそれとして静かに眺めていたほうがいいのかもしれない。逆に言えば、そのようにしてお金を循環させなければ音楽業界も成り立たないほどに衰退してしまっているのかもしれない。今の人たちはCDを買うのではなく、携帯電話やパソコンの音楽プレイヤーにダウンロードする形で音楽を楽しんでいる。CDという媒体に対する価値観が以前とは全く変わってしまったのだ。CDを買いに行ってジャケットや歌詞を見て楽しむことよりも、「今すぐに」「手軽に」ということのほうが今の人たちには重要視されているのだ。恐らくこのまま音楽の「電子消費」化が進めば、CDという媒体は消え去っていく。それが良いのか悪いのかは私にはわっきりと断言しかねるが、次のことだけは言える。
「ああCDは良かったなぁ・・・」などと無くなってから呟いてももう無駄である。

・・・

たとえば、今年流行したものに「AKB48」と「Girls Generation(少女時代)」がある。ともにいわゆるアイドル・グループとして今年の日本を大いに盛り上げてくれたが、すぐに気がつくのはその売り出し方の違いである。日本を代表するAKB48は歌唱力やダンスよりも「ルックス」「かわいさ」重視なのがよくわかるが、それに対する韓国のダンス・ユニット少女時代はプロモーションビデオなどを見ても、やはりダンスや衣装が非常に洗練されていてどちらかといえば「クールさ」が印象に残る。そして発表される楽曲は次々と日本向けに加工しなおされ、一つの「輸出品」として日本社会に浸透していく。このことから透けて見えるのは、やはりアジア全体において日本がいまだに大きな経済基盤と底力を秘めているということだ。
 
05.jpgさて、そんな華やかな音楽世界に対して、極めて男クサイ音楽世界がある。それは「ヘヴィー・メタル」だ。今年の春『アンヴィル!〜夢を諦めきれない男たち〜』という映画が日本で公開された。実に30年以上も活動を続けているにも関わらず運に恵まれず鳴かず飛ばずのカナダの“元祖メタル”バンドの一つだが、そんな彼らの友情と様々な葛藤を描き出したドキュメンタリー・フィルムだ。彼らの奏でる音楽はどれもがむき出しでエモーショナルなもので、必ずしも名曲とは言い難くとも、確かに心の奥底を揺さぶる何かがある。15歳の頃から一緒に音楽を奏で続けているギター&ヴォーカルのリップスとドラマーのロブは、新しいアルバムのレコーディング中に、他愛も無いことから口論をはじめ、遂にはロブがバンドを辞めるとまで言い出してしまう。すっかり感情的になってしまったリップスはどうしていいのかわからず、ロブのところに謝罪へ行く。そこでリップスはロブに対してこう言うのだ。「お前以外に一体誰に弱音を吐いたり、愚痴を言ったりできるっていうんだ!」。それほどまでにリップスはロブを信頼し、必要としていたのだ。この男たちのアツい友情には思わず胸を打たれ涙してしまった。二人の不和は解消し、13枚目のアルバムの製作も無事終了。そしてAnvilは今も大きな目標に向かって日々男クサク、Keep on Rockingし続けているはずだ。

かつて、レニー・クラヴィッツというギタリストが_Rock'n' Roll is dead”と歌ったが、ロックンロールはまだ死んではいない。 (文:編集長 野上郁哉)



<   2010年12月   >
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
フリーペーパー版模索舎月報
  • 2011:10:10:20:20:21 フリーペーパー版模索舎月報11年10月号配布中!! (10/10)

リンク
★☆模索舎ブログ☆★


特集〜インタビュー・活動紹介など